そんなことも知らずに、松本はF3のレース中にミーティングですばやく今日のレース戦略を編み出して、自分のモーターホームに帰っていった。またいつものように漫画を読みふけっている、と思ったら、子供の世話をしていた。こういうこともあろうかと、松本のモーターホームに託児所を設けていた。いつもは保育士が一人で世話をしているのだが、時間があるときには極力遊んであげてるようにしている。もちろんヒッキーもこの子らの母として、仕事の合間を縫って会うようにしている。こうして加藤に「松本さんそろそろガレージに来てください。」と言われるまで遊び、ヒッキーと一緒にモーターホームを出た。明ちゃんはおとなしく手を振って、ばいばい、と言って送ってもらえたが、双子の兄、智也くんはぐずりだして、保育士さんに説得されてようやく泣くのをやめた。
14:30
いよいよ第2戦 鈴鹿決戦の火蓋が切って落とされる。その前に行われた8分間の最終調整では、松本は改心の走りを見せた、たった8分で、主回数も2,3週しかできなかったが、その中ではトップタイムをたたき出し、決勝レースに向けたレースセッティングは万全だ。そのアナウンスに、午前の不調が一気に晴らされたような気分になったファンもいた。一旦ガレージに戻った松本は、山口さんに手でOKサインを出して、セッティングは万全だということを示した。わざわざ変える必要もないし、何かあれば自分で何とかすると言って、すぐにエンジンをかけるよう指示。まだピットレーンシグナルは赤だというのに。
そのシグナルがグリーンに変わったと同時にコースインした松本、その後ろから竹入が迫っている。これは、レース前だというのに、早くもここまで接近したバトルでも?いや、こうして近づいてセッティングの確認をしている。わかるのは、リヤウィングの角度ぐらいだが、しかも、松本が上げる水しぶきをうまく避けてる。松本にとって、これがうっとおしくてしょうがない。速く走ろうとすると、追いかけてくるし、遅くするとやたらと近づいてくるし、ならばと思って考えたのが、「コースオフして竹入蹴散らしてみます。」デグナーカーブでわざとコースオフすると、さすがの竹入でも砂利道までは追いかけてこなかった。
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